宇宙政策シンクタンク「宙の会」は、宇宙政策について調査、議論し、提言することを目的にしています。多くの欧米のシンクタンクに見られるように、下請的調査ではなくて、中立、公平な立場での政策提言をめざします。そのスローガンは「静かな抑止力」。宇宙活動を世界標準並みに、科学技術力、将来産業力、環境・災害監視力、国際協力と外交力、という国の総合的ソフトパワーに活用すべきとの考えです。

H-II・H-IIAロケットの開発効率の考察

白子悟朗

 

H-IIA-11号機の打ち上げが成功し、打上失敗率も10%を割り一桁の大台となった。 宇宙プロジェクトの最大のリスクは打上げ段階にあり、打ち上げ機自体の技術が十分に成熟してきても、この状況は変わらない。

ロケットも一般工業製品と同様に同一機種を繰り返し生産すれば信頼性・品質が向上することは、世界の主要なロケットの経験曲線で明らかである。

図−1は、主要なロケットの経験曲線を示す。横軸は順に1−10号機まで、11−20号機、21−50号機等のように累積打上げ機数のグループごとの失敗率を示している。

   

図1 打ち上げ機数と失敗率(%)

図−2は、横軸に主要なロケットの初号機の打上げ年をとり、各ロケットの10号機までの失敗率を示したもので、世界全体としての新規ロケットの設計技術の経験曲線といえる。

 

図2 開発段階(1〜10機)の失敗率(%)

これらから見えることは、

・    どのロケットも開発の初期では数十%、ロケットによっては50%を超える失敗を乗り越えて成熟し、累計で100機を越えると漸く安定し、一桁台となっている

・    これらのロケットの中で急速に失敗率を下げているアリアンシリーズや中国のDFシリーズも、先行したロケット開発や軍用ロケットでの多くの失敗を経験した上に有るものである

・    特にアリアンは商業利用に耐える確実性の高さを追求した結果、短期間に極めて高い信頼性を確立したと言えよう

・    わが国のH-II、H-IIAはその失敗がクローズアップされてきたが、上記の図や考察からは、新規ロケットの開発初期(1-10機程度)としては世界レベルの信頼性を実現できており、他国に比べて一桁以上少ない打ち上げ経験を考慮すれば、その開発効率は高く評価されても良いと思う。

 

今後のH-IIAロケットには、

・    H-IIAロケットの民間移管では、継続した信頼性向上・維持と安全確保は必須

・    万一の失敗による衛星等ミッションの打上げ機会喪失回避の対策(補完や早期打上げ)

・    打上げ数の利活用に対しては政府のアンカーテナンシーは不可分。そのためには衛星利用ミッションの創出と早期実行

を期待したい。

 

参考資料:

1)     M.Shimizu G.Shirako, H.Yamamoto “Risk Management in Large Scale Development” ProMAC2004

Space Launch Report HP