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日本でも独自の有人宇宙飛行を、という議論が長年にわたってされてきた。
日本人宇宙飛行士は8名、その活動にたいしてNASAからも賞賛の声が上がるほどレベルが高い。しかし、搭乗するロケットは国産でなくアメリカ製のスペースシャトルである。日本の宇宙政策では、国際協力を前提に有人宇宙飛行をすすめてきたから、H-IIAロケットも無人仕様で設計され、回収船も限られた技術試験しか行われていない。長征ロケットと神舟宇宙船によって有人宇宙飛行を独自に成功させた中国と比べると、それは宇宙政策の差によるとしかいいようがない。
ロケットの信頼性向上と回収技術をすすめれば、独自の有人対応型ロケットは可能だが、現段階では巨費を投じ一気に進めることは難しい。
それでは、有人飛行技術はこれら輸送系技術が進化するまでは、本格的な研究開発に手を付けないのだろうか。有人宇宙飛行は総合技術であって、輸送系技術だけに限るものではない。そして、宇宙活動がつづく限り、有人飛行技術の必要性を否定する人はいないだろう。
日本人宇宙飛行士が船外活動をおこなう機会が多くなり、宇宙空間での宇宙服の役割があらためて実感される。こまかな作業にも手間を取って扱いにくい、船外活動前後に長時間にわたる気圧調整準備が必要、重い、高いなど欠点がめだつ。
宇宙服といっても、発射と帰還時、船外活動、月面活動、火星面活動、水槽での訓練では、それぞれ機能も異なるが、せめて、船外活動と月・火星活動で共通につかえる宇宙服があれば理想だ。
“服”というので矮小化されるが、これは宇宙で人が活動するための統合システムで、有人宇宙船の機能をコンパクトにまとめたものといえる。
現用の宇宙服では、米ロの2系統では多少の差はあるものの、高真空、無重力、宇宙放射線など、きびしい宇宙環境から人の命をまもる機能と構造はほぼ同じである。内部は気圧が0.3気圧の純酸素で満たされ、呼吸から排出される二酸化炭素や汗などの水分を除去し、水冷下着を着用して温度を適度にたもつ仕組みである。素材には強度とともに気密・断熱・柔軟性が、関節まわりなどには可動性が求められる。バックパックよろしく生命維持装置を背負った重装備だから、重さのない宇宙空間でも、宇宙飛行士にとっては100kgを超すスーツを着こなして作業するのは至難の業である。

人の生命を守りながら活動するための服としては、潜水服、消防服、飛行服などがあるが、宇宙服はその究極に位置するものだ。宇宙服も時代によって、使用環境によっても変わり改良がおこなわれてきたが、宇宙服そのものは過去50年の間、抜本的に改良されてきたとは思えない。それは安全のために実績と継続性を重視しているためだろうか。
ただ、月・火星、さらにそれを越えて宇宙へ人類が本格的に進出しようとする今、最新技術を活用して、革新的な新型宇宙服を日本で開発すべきではなかろうか。そして新宇宙服を開発することが、日本技術の総合発展にとっても、宇宙協力の国際貢献にも好ましいと考える。
宇宙服開発と製造ノウハウは、アメリカでも1960年代から、ハミルトン・スタンダード社に集中している。日本ではこれまで宇宙服の研究開発の経験はないが、耐熱・放射線防護服など他分野での技術がつかえるし、繊細な動きや強い力を出すロボット、高強度・軽量な新素材、ウェアラブル・コンピュータ、高効率で軽い電源、小型高速な通信系などは、日本で得意な分野である。
それに何といっても、日本人宇宙飛行士はアメリカで訓練をつみ、スペースシャトル、国際宇宙ステーション飛行で高い実績を上げ、宇宙服の運用・技術・管理面に精通している。国内ではJAXAが、宇宙飛行士の選抜・訓練・健康管理を30年来おこなってきたから、有人宇宙飛行の研究・試験施設も一応は整っている。
研究にあたっては、まず将来宇宙服のターゲットを定め、システムと要素から検討をはじめる。オールジャパンの研究体制で、経験をつんだ宇宙飛行士をコアとした有人飛行研究室(仮称)で始めるがベストだろう。
宇宙服には、長い歴史と実績があり、簡単に国際標準として採用されるのは容易でないだろう。しかし、この先の宇宙活動を考えると、21世紀の技術、とくに日本が得意とする繊細な先端技術を使って、宇宙活動に最適な宇宙服を創りあげるのは、きわめて意義が高いと考えられる。その過程で、宇宙に限らない有意義な数多くの生命科学・工学に関する知見が得られるのも大きなメリットだ。
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